北朝鮮、巨大ウサギに食指

 食糧難にあえぐ北朝鮮がドイツの“珍獣”に関心を寄せている。通常のウサギの3倍ほどもある「灰色の巨人」の異名を持つ巨大食用ウサギがそれだ。北朝鮮政府の依頼でこのほど巨大ウサギを同国に輸送したドイツ人の男性は、北朝鮮外交官との意外なやりとりの一部を明かした。(独東部エバースバルデ 黒沢潤)

 この男性は、エバースバルデで巨大ウサギの交配・飼育を42年間行っているカール・スモリンスキ氏(67)。このウサギは「世界最大品種」といわれ、体長約70センチ、重さが10キロ前後ある。1匹からは7、8人分の肉(約7キロ)がとれる。

 北朝鮮がスモリンスキ氏に接触してきたのは昨年10月。同氏がこれに先立ち行われた巨大ウサギ・コンテストで、最優秀賞を受賞したのを北朝鮮メディアが取材したのがきっかけで、同国指導部が興味を持ったとみられるという。

 昨年11月上旬には在ベルリン北朝鮮大使館の外交官が同氏宅を訪問。巨大ウサギをみるや、「肉、肉、肉」と異常なほどの関心を示したという。ドイツでは通常、1匹あたり200ユーロ(約3万1000円)〜250ユーロするが、3分の1程度で売ることで合意し、先月上旬に計12匹を北朝鮮に輸送した。

 この外交官は、訪問時に旧東独の独裁者、ホーネッカー元国家評議会議長(1912〜94年)についての感想も求め、同氏が「いい政治家だった。少なくとも我々を餓死させることはなかった」と皮肉たっぷりに答えると、動揺して言葉を発しなかったという。

 スモリンスキ氏は今年4月、北朝鮮政府の依頼で約1週間、北朝鮮を訪問し、ウサギの繁殖法を指導する予定で、「指導の傍ら、スーパーにも足を運ぶつもりだ。(一般的に)肉が国家のエリートだけでなく、庶民の手にも渡っているか、しっかり見てくる」と話している。

(2007/01/30 02:23)

1/30付 産経新聞